19世紀の醸造所で、愛を誓う!?

Distill_02

トロントのダウンタウンからTTCで東に向かうと、オンタリオ湖畔にほど近い場所に、古いウイスキー醸造所跡があります。街の喧騒を離れ、ゆったり過ごせるヨーロッパ調の佇まいは、地元の人々の憩いの場。カフェでゆったり過ごす良い季節になりました。

今回は「ディスティラリー」のご紹介です。

まずは行き方から

R9255927

ディスティラリーへは、地下鉄駅からストリートカーで向かいます。例えば地下鉄キング駅下車だと、504ストリートカーで東へ行き、「パーラメント(Parliament)」下車。徒歩で南へ2ブロック。約20分です。

ディスティラリーとは?

世界が大きく変わった、産業革命。発祥のイギリスと深いつながりがあったトロントには、当時多くの企業家が移住を行いました。その中に、 James Worts という人物がいます。彼はイギリス東部の州サフォークで製粉所を営んでいましたが、1831年にヨーク(現在のトロント)に移住し、オンタリオ湖畔に同じ製粉所を建設します。翌年に義理の兄 William Gooderham が彼の元に移り住みますが、James はその後非業の死を遂げると William が経営を引き継ぎます。

当時のカナダは、イギリスやスコットランドを中心に、ヨーロッパから多くの移民がやってきて、ヨークでは数々のビジネスが立ち上がり、郊外では農地開拓が行われて小麦やライ麦などの穀物が生産されていました。冬の長いカナダ。農家では、収穫時期が終わると、余った穀類を使ってウイスキーを造り、自分たちで飲んだり販売するということが行われていました。

R9255940

そんな習わしに従ったのか、William も1873年に製粉所で余った小麦を使ってウイスキーの醸造を始めます。これがビジネスとして成功し、1859年になると規模を拡張して醸造所「Gooderham and Worts」を建設します。

ディスティラリーというのはウイスキーなどスピリッツの「醸造所」のこと。ここは今から200年前、カナダで有数の醸造所だったのです。

R9255953

当時はオンタリオ湖畔だった醸造所から、こんな風に直接船でアメリカに向けて輸出されていました。現在では埋め立てが行われたため当時の面影はありませんが、正面入り口の右側にある壁には、パネルが当時の歴史を伝えています。

Distill_01

こうした成功をもとに、William はトロントの街が急速に発展した19世紀中頃、金融、運輸、貿易において大きな役割を果たすリーダーにのぼりつめ、1864年にはトロント銀行の頭取に就任します。現在でも観光名所のひとつとなっている緑の塔が特徴的な「Gooderham Building」は、カナダの中でも最古の建物のひとつとなっています。

世界に名だたるカナディアン・ウイスキー

カナダは、世界5大ウイスキーのひとつ(スコッチ、アイリッシュ、バーボン、日本、カナディアン)に数えらえる産地。カナダのウイスキーは「Rye(ライ麦を使ったウイスキー)」とも呼ばれ、独特の風味とライトな味わいが人気。

Distill_03

トロントではLCBOという酒屋さんにカナディアン・ウイスキーのコーナーがあり、カナディアン・クラブを始めとした伝統のカナディアン・ウイスキーがずらりと並びます。従来トウモロコシからのスピリッツを主とし、ライは香り付けに混ぜる程度の配合でしたが、最近ではスモール・バッチ(少量生産)の100%ライ・ウイスキーなどが販売されるようになり、古き良き伝統を手軽に味わえるようになってきました。

R9244286

「マンハッタン」は、ライウイスキーにスイート・ベルモットとアンゴスチュラ・ビターズで作るカクテルの女王。カクテル好きの方は、トロントのバーで味わうのも旅の楽しみになりそうです。

醸造所の第二の人生

当時のディスティラリーでは、こうしたウイスキーが最盛期にカナダで生産される実に半分の量が生産されていたというから驚きです。その後ブームが去り工場は閉鎖されるという憂き目にあいますが、トロント発展の重要な歴史を伝える建物であるということから地区は保護され、取り壊しの危機から逃れます。

落ち着いた静かな佇まいのヨーロッパ風のレンガ造りが特徴的な醸造所跡として「Distillery District(ディスティラリー地区)」と命名され、現在はギャラリーやレストラン、ショップなどが入る観光スポットとして新たに生まれ変わりました。

R9255943

最近密かに人気のコレ

さて、こんな歴史が記憶されている場所に幅9メートルの鉄製のオブジェが設置されているのをご存知でしょうか。場所は、正面入り口から入ると、最初の路地を左に入った左手の壁にあります。

R9255948

これは「Love Lock」と呼ばれるいわゆるパブリック・アートで、私たちがロック(鍵)をつけることで完成する、というように作られています。

R9255944

1) ロックを自分で買ってくる
2) イニシャルあるいは何かメッセージを書き込む
3) LOVEオブジェクトにしっかりと鍵をかける
4) パートナーにキス
5) 鍵は誰も見つけられないところにしまう
6) お好みでツイッターにハッシュタグ #DistilleryLove をつけて全世界にツイート

R9255949

トロントは世界で最も開かれた自由な都市のひとつ。ここで誓えば、きっと幸せな未来が開けてくることでしょう!

公式ウエブサイト:http://www.thedistillerydistrict.com