未来のトロントを湖畔の「プロムナード」で体験

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カナダの商都と言われる、トロントを象徴する金融街の超高層ビル群。そこから目と鼻の先、歩いても10分ほど南に下ると、五大湖の一つオンタリオ湖が見えてきます。地元では「ウォーターフロント」と呼ぶ、注目のエリアです。

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見どころは、美しい水際の風景を楽しめる湖畔のライフスタイル。ここ10年、次々と高層コンドミニアム(日本ではマンション)が建設されると、ちょうどユニオン駅からまっすぐおりたクイーンズ・キーを中心としたエリアは、多くの人が住む不動産のホット・エリアとなりました。

歴史を少しばかり

18世紀の終わり、イギリス人John Grave Simcoeがトロントの街づくりを始めた時、ここはオンタリオ湖畔にあるのどかな森でした。しかし彼はここのユニークさに目をつけ「地の利」に注目し、街づくりを行います。周辺に住んでいたファースト・ネーションズから土地を買う契約をし、故郷イギリスの古都York(ヨーク)という名付けた街は、まもなくトロント市と改名されます。

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当時アメリカと激しい戦いを繰り広げていたカナダは、国境線を防衛する拠点となる戦略的な都市が必要でした。現在のセントローレンス・マーケット周辺に市の機能を集中させ、西のはずれにヨーク砦(Fort York)をつくると、軍事道路として西に伸びるダンダス・ストリート、北に伸びるヤング・ストリートが完成させ、着々と交通の要所としての都市のカタチをつくって行きます。

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五大湖のお隣のエリー湖へ抜けるウエランド運河が完成すると、大西洋からセントローレンス川を通り五大湖がつながる海の街道ができあがり、アメリカに最も近い陸と海の拠点としての商都トロントが誕生します。

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もともとの湖畔は現在よりずっと手前側、セントローレンス・マーケット南棟の南端部にありました。マーケット東側の道路がスロープのように下がっているのがその名残りで、昔はオンタリオ湖で獲れたサーモンをそのまま運び入れていたのだそうですが、街が発展するにつれて埋め立てが進み、現在の「ウォーターフロント」になりました。

トロントの新しい街づくりのカタチがここに

ウォーターフロントは全部で6つのエリアに区分されますが、今回ご紹介するのは「Central Waterfront」と呼ぶ中央部。2006年から再開発の計画立案と調査が行われ、2010年にマスタープランが策定されると工事が始まり、ようやく 念願かなって昨日(2015年6月19日)に完成した、というわけです。

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特にデザインの目玉となるのが、昨日公式オープンを果たした「Promenade(プロムナード)」と呼ばれるクイーンズ・キー・ブールバード(Queens Quay Boulevard)沿いのエリア。

特徴は、これまでの道路と歩道という従来通りの街並みを一新したことにあります。

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北側にはクルマが走る道路、隣がストリート・カーの軌道、そして植木で区切られたサイクリング・ロード、最も湖畔側には遊歩道を作りました。オンタリオ湖がつくりだす美しい自然を、多くの人に身近に体験してもらえるように、またそこに住む人々にとっても機能的なプロムナードが誕生しました。

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早速、サイクリング・ロードには自転車をはじめ、ローラーブレード、スケボーで乗り入れる若者の姿が多く見られ、専用レーンを気持ちよさそうに走っている姿が印象的です。

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ここには自転車用信号機が設置されましたが、おそらくトロントでは初めてではないでしょうか?

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街が始まった時はわずか数百人だったトロントの人口は、19世紀になりイギリス、アイルランドをはじめ、ヨーロッパから数十万人単位の移民が流入し、今では全世界の人々が住む人口600万の大都市に膨れ上がりました。

最近トロントでは盛んに「Diverse(多様な)」という言葉が使われます。無秩序になりそうな多様性のなかで、増え続ける人の流れを決める交通をどうデザインしていくのか。街のアイコンとして長く親しまれているストリートカーとクルマ、自転車と歩行者との共存は、トロントの街づくりの将来を見据える大きな課題です。

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今回のプロムナードのデザインは、こうした課題に答えるため、ここに住む市民も加わり生み出されたもの。記念式典には、政府の代表、トロント市長に並び、住民の代表者も挨拶を行いました。

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記念式典の後、市民の手に湖をイメージしたブルーのシートが持たれ、テープカットならぬシートカット? が行われました。

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トロントのJohn Tory市長も加わります。

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「え? これどうするの?」カナダの財務省Joe Oliver大臣(左)が、ジッパーの最初を開きます。

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珍しい、ジッパーを使ったテープカットの瞬間です。

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記念式典は、めでたく終了。拍手と歓声がわきます。

多様な意見がまとめられ、クルマと、公共交通機関と、自転車と歩く人が共存する「新しいトロントの街づくり」のカタチが、完成です。

さらにアクセシブルに

トロント・アイランド島がちょうど湾のように囲むエリアは、湖面が穏やか。ここは、年間170万人もの人が訪れるトロント第2の観光地(ちなみに第1位はイートン・センター)。ヨットにカヌー、遊覧船などが行き交い、入り江を作り出すユニークな形のトロント・アイランド島とはフェリーで結ばれ、四季折々の美しい自然が楽しめます。

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カナダ国内とアメリカ東部主要都市を結ぶトロントアイランド空港、ピアソン国際空港とユニオン駅を25分で結ぶ「UP Express(アップ・エクスプレス)」鉄道、ユニオン駅とハーバーフロントを結ぶ「PATH」通路など、ますますアクセシブルになるトロントのオンタリオ湖畔。

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ちょうどこの週末(2015年6月19〜21日)は、ウォーターフロントでお祭りが行われていますので、ぜひおでかけください。